青い空はポケットの中に(はてな版)

ドラえもん、藤子不二雄、音楽、映画、アニメなど気ままに。

2015年ベストアルバム

 今年は5年ぶりにベストアルバムを選んでみることにした。ここ数年、米音楽サイト「Pitchfork」の台頭を背景に、豊かな音楽的知見を下敷きに芸術性と同時代性を加味したピッチフォーク的価値観*1からの影響力を排除することはもはや不可能な一方、私自身がビートルズを入り口に音楽を聴き始めたことから、マスに刺さる音楽も相変わらず好きであり、両者を折衷して選定している。基本的には2015年にリリースされた洋楽アルバムのうち、私が聴いた作品の中から独断と偏見で選んだに過ぎないが、UKギター・ロックとUSインディー勢が中心の顔ぶれとなった。なお、1位〜10位は寸評付き、11位〜20位は順位付けのみ、21位以降は順不同(アルファベット順)に列挙した。

1位〜10位

1. Tame Impala - Currents
 オーストラリアのサイケデリック・ロック・ユニット、テーム・インパラの3rdアルバムとなる今作はギター・サウンドを抑制し、シンセ主体のメロウなサイケデリック・ポップに仕上がっている。ポップであるということはマスに寄り添うということでもあり、本作が決して好事家だけの作品に留まらないことを意味している。そもそも、彼らはサイケ期のビートルズに範をとったとされるサウンドが持ち味であり、ビートルズが芸術性と大衆性を兼ね備えた稀有なバンドであったことからも、本作のようなアルバムが生まれたことは歴史的必然とさえ言える。そのような点でも2015年を代表する1枚である。 #2「Nangs」は2分弱の繋ぎ的な小曲ながら、シンセのうねりがマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン的な陶酔感を喚起させる。

カレンツ

カレンツ

 


Tame Impala - Let It Happen


2. Noel Gallagher’s High Flying Birds - Chasing Yesterday
 
ノエル・ギャラガーのソロ2ndアルバム。前作では今後の音楽活動を一人で背負っていくことへの気負いが感じられたが、今作ではそのような悲壮感は感じられない。何より全10曲、ノエルのソングライターとしての魅力が余すところなく収められている。前作では鳴りを潜めていたギター・ソロも復活し、本来のギタリストとしての領分も存分に発揮されているのもいい。#4「Lock All The Doors」のように、オアシスのデビュー前に書かれた、それも弟リアムに似つかわしい楽曲*2を何の衒いもなくアルバムに組み込んでいることからも、オアシスとの決別が感じられる作品になっている。#1「Riverman」は間違いなくノエル・ヴォーカル曲の傑作の一つ。

チェイシング・イエスタデイ(初回生産限定盤)

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Noel Gallagher’s High Flying Birds - Riverman

 

3. Beach House - Depression Cherry
 
アメリカのドリーム・ポップ・バンド、ビーチ・ハウスの5thアルバム。今作はよしもとばなな『キッチン』からインスピレーションを得ているという。全9曲・45分、心地良いノイズの海をたゆたうような心地にさせてくれる。中でも白眉は#2「Sparks」だろう。世間にドリーム・ポップと呼ばれるジャンルを鳴らすアーティストは数あれど、コクトー・ツインズ、スロウダイヴに連なる系譜の正統な後継者に最も相応しいバンドではないか。なお、同年にリリースされた姉妹作『Thank You Lucky Stars』も本作に勝るとも劣らない作品である。

ディプレッション・チェリー

ディプレッション・チェリー

 


Beach House - Sparks


4. Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly
 
残念ながらヒップホップの素養に乏しいため、ケンドリック・ラマーの最新作を上位に挙げるのは些かミーハー的な振る舞いではあるのだが、人種差別と正面から向き合ったこのアルバムに敬意を表する意味でもこの位置にした。とはいえ、ジャズ、ファンクといった黒人音楽の系譜が大胆なサンプリングという形で提示されているので、ヒップホップ/ラップに耳馴染みがなくても十分過ぎるほど聴き通せるのがまた偉大というべきだろう。アイズレー・ブラザーズをサンプリングした「i」は2015年に最も繰り返し聴いた曲の一つとなった。下記のYouTubeはシングル・ヴァージョンだが、アルバム・ヴァージョンの方が断然良い。なお、ヒップホップと新たな公民権運動の関係について音楽評論家の高橋芳朗氏が解説したTBSラジオ荻上チキ・Session-22』の2015年9月17日放送分*3は一聴の価値あり。

トゥ・ピンプ・ア・バタフライ

トゥ・ピンプ・ア・バタフライ

  • アーティスト: ケンドリック・ラマー,ジェイムズ・フォンテレロイ,ラプソディー,ジョージ・クリントン,ビラル,ロナルド・アイズレー,K.ダックワーズ,D.パーキンス,マシュー・サミュエルズ,T.マーティン,C.スミス
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: CD
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Kendrick Lamar - i (Official Video)


5. Blur - The Magic Whip
 
大好きなブラーがニュー・アルバムを出す、それだけでも嬉しいニュースだが、そのきっかけが大風呂敷を広げた挙句中止となった本邦の某ロックフェスであった*4と聞けば、なんとも皮肉な因果であると思わざるを得ない。その空いたスケジュールを利用して香港でレコーディングされた本作は、アートワークや#3「Go Out」のMV*5に見られるように、デーモン・アルバーンの東洋趣味が感じられるアルバムになっている。そしてグレアム・コクソン独特のギター・カッティング、これが聴きたかった! #1「Lonesome Street」はかつて犬猿の仲だった元オアシスのリアム・ギャラガーもお気に入りの1曲に挙げている(皮肉屋の兄ノエルとは違い、彼の性格からして素直な褒め言葉と受け取って差し支えないだろう)。

ザ・マジック・ウィップ

ザ・マジック・ウィップ

 


Blur - Lonesome Street (Official Video)

 

6. Jamie xx - In Colour
 イギリスのロック・バンド、ザ・エックス・エックスのフロントマンがジェイミー・エックス・エックス名義でリリースしたソロ・アルバム。ザ・エックス・エックスの1st『The xx』(2009)は音数を抑えたミニマルな作りながら通して聴けるポップネスも備えていて、私も2009年のトップ10アルバムに挙げた*6。そして今作は昨今のトレンドであるEDM路線に接近しつつ同時代性と音楽的評価の両方を獲得しており、しっとりとした大人のアルバムとしても聴けるようになっている。

イン・カラー

イン・カラー

 


Jamie xx - Gosh (Official Music Video)

 
7. The Go! Team - The Scene Between
 インディー・ロックを下敷きに、カラフル、多国籍、ミクスチャーといった言葉で形容される、まさしくごった煮なサウンドを展開するイギリスのロック・ユニットの4thアルバム。メンバーのイアン・パートンはももいろクローバーZの「労働讃歌」を作曲したことでも知られる。これまでにリリースされたすべてのアルバムを愛聴しているが、特に今作は歌モノ重視に振った点でも長く付き合えるアルバムになるだろう。

THE SCENE BETWEEN

THE SCENE BETWEEN

 


The Go! Team - What D'You Say?


8. Deerhunter -  Fading Frontier
 
アメリカのロック・バンド、ディアハンターの最新アルバム。かつてはシューゲイザーの一派と見なされたこともあった。彼らのディスコグラフィの中でもとりわけ『Halcyon Digest』(2010)は掛け値なしの名盤といえるアルバムだが、今作も2015年のトレンドよろしくシンセ主体のメロウなドリーム・ポップに仕上がっており、こちらも負けず劣らず美しい。

フェイディング・フロンティア

フェイディング・フロンティア


Deerhunter - Snakeskin

 

9. Albert Hammond Jr. - Momentary Masters
 ザ・ストロークスのギタリストであるアルバート・ハモンド・ジュニアのソロ3rdアルバム。エッジの効いたミュート気味のギター・サウンドといい、ストロークスの近作や他のメンバーのどのソロ・アルバムよりもギター・ロック然とした佇まいになっている。

Momentary Masters [帯解説・歌詞対訳 / 国内盤] (MGNF1031)

Momentary Masters [帯解説・歌詞対訳 / 国内盤] (MGNF1031)

 


ALBERT HAMMOND JR. - CAUGHT BY MY SHADOW (Official Music Video)


10. Ash - Kablammo!
 イギリスのロック・バンド、アッシュの8年ぶりとなった6thアルバム。デビューが10代中盤と早く、キャリア的には中堅・ベテランといって差し支えない年齢に達しているが、ロックな曲もバラードも相変わらず甘酸っぱい青春サウンドに溢れていて、このメロディのためだけに8年待った甲斐があると思わせてくれる。このバンドが背伸びした若作りもせず、一方で歳相応に枯れることもなく瑞々しさを湛えているのはもはや奇跡的な輝きとさえ言える。

KABLAMMO!

KABLAMMO!

 


ASH - Cocoon

11位〜20位

11. PINS - Wild Nights
12. The Chemical Brothers - Born In The Echoes
13. Muse - Drones
14. Brian Wilson - No Pier Pressure
15. Beach House - Thank Your Lucky Stars
16. Robin Guthrie & Mark Gardener - Universal Road
17. Johnny Marr - Adrenalin Baby - Johnny Marr Live
18. Mew - + - (Plus Minus)
19. Swervedriver - I Wasn't Born To Lose You
20. The Strypes - Little Victories

21位〜(順不同)

Belle And Sebastian - Girls In Peacetime Want To Dance
・Camera Shy - Camera Shy
・The Charlatans - Modern Nature
・Christopher Owens - Chrissybaby Forever
Coldplay - A Head Full Of Dreams
・Eric Kaz - Eric Kaz: 41年目の再会
・FFS - FFS
・Flyying Colours - Fcepx2
・Grimes - Art Angels
・Here We Go Magic - Be Small
・Housse de Racket - The Tourist
・Hurricane #1 - Find What You Love And Let It Kill You
Julia Holter - Have You In My Wilderness
The Libertines - Anthems For Doomed Youth
・Lusts - Illuminations
・Martin Courtney - Many Moons
・Mika - No Place In Heaven
Neon Indian - Vega Intl. Night School
・No Joy - More Faithful
・Nothing But Thieves - Nothing But Thieves
・Of Monsters And Men - Beneath The Skin
Owl City - Mobile Orchestra
Passion Pit - Kindred
・Peace - Happy People
・Ringo Deathstarr - Pure Mood
・Rumer - B Sides & Rarities
・San Cisco - Gracetown
・Seapony - A Vision
・Smallpools - Lovetap!
・Summer Twins - Limbo
・Toro Y Moi - What For?
・The View - Ropewalk
・Westkust - Last Forever
・Wolf Alice - My Love Is Cool

 

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

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キッチン (角川文庫)

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